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「中盆」を務めた恵那司は悪の張本人なのか?

 今回、八百長が発覚した力士は全部で14人である。

 発覚して、八百長を認めざるを得なくなったのが、恵那司、春日錦、千代白鵬の3人。発覚の元になったのは、2010年7月に野球賭博捜査過程で押収された千代白鵬と春日錦(2011年1月引退、竹縄親方)の2人のケータイメール。ここから復元されたデータにより、この八百長ネットワークは明るみに出た。

 なぜ、誰も「メールだけはやめよう」と言わなかったのだろうか?

 以前の注射は、ケータイを使っても口だけだった。それが、いつのまにかメールになり、銀行口座まで連絡している。これも以前は、現金精算だった。八百長の決済を銀行口座で行うこと自体、かつて注射をしてきたいまの親方連中から見れば、信じられなかったのではなかろうか。

 それはともかく、今回の報道では通り一辺倒で、恵那司を八百長を仕切った極悪人のように書いてあるところがあるが、完全に的外れだ。

 恵那司は岐阜県恵那市(旧明智町)出身。実家は八百屋をしていて、父を早くに亡くして母の手ひとつで育ったという。今回の件で、恵那司の実家周辺を取材した週刊誌記者はこう語る。

「近所での評判はよく、母親をよく手伝う優しい子だったそうです。新聞配達をしていたので、几帳面でマメ。学校の同級生たちも、彼のことを悪く言う人間はいませんでした。ただ、几帳面でマメという性格は、中盆役としてはうってつけだったようですね」

 恵那司は中学を卒業すると、入間川部屋に入門し、1995年5月場所で初土俵を踏んだ。その後、序二段で長く時間を要し苦労したが、三段目に上がった後はすぐに幕下まで昇進。ただ、その上にはなかなか進めず、今回の八百長発覚まで、幕下と三段目の往復を続けてきた。

「恵那司は記憶力がよく、計算も早い。だから、重宝されていた。あいつ一人に責任をかぶせるのは間違っている」

 と、ある力士は言う。

(2011年2月7日記)

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