第1回 相撲部屋の収入はどうなっているのか?
現在、相撲部屋の数は51ある。
力士は引退すると、部屋を持って親方になりたがるが、その最大の理由は、部屋さえあれば協会からお金が定期的に入り、生活も地位も保証されるからだ。いったん年寄株を取得すれば、定年の65歳までに、毎年1000万円以上の収入が事実上保証される。さらに、部屋を運営して幕内力士を育てればタニマチがつき、さまざまな別収入も得られる。
相撲部屋には、協会からさまざまな名目でお金が支払われる。
部屋維持費とか稽古場維持費、力士養成費などという名目で、幕下以下の力士の場合、一人につき一場所ごと(つまり2カ月に1度)に約30万円ずつ支給されることになっている。たとえば、部屋に幕下以下力士が10人いれば、300万円が2カ月ごとに入金され、年間で約1800万円という基礎収入が得られる。
幕下力士の場合、たいていは部屋に住み込みで、上位力士にアゴで使われ、さらに部屋維持の下働きもさせられるから、食費さえ抑えれば、相撲部屋は支度金付きの労働力を持っているのと変わりない。
しかし、この幕下以下の力士が昇進して関取になると、親方には関取の地位に応じて功労金とし3〜5万円が支給されるが、それまでの頭数に応じた養成費などはすべて失われる。十両以上の力士には、協会は本人に直接月給を支給する。
ただし、幕内力士には、人気に応じてタニマチが着く。そこで、人気力士をかかえている部屋は、その力士をタニマチの宴席などに行かせ、ご祝儀という営業収入で稼がせるのである。さらに、各種のパーティなどでも副収入がある。このようにして集められたご祝儀などは、協会とは一切関係なく部屋に入る。しかも、パーティなどの儲けは、領収証が必要な企業タニマチをのぞいて一切計上しなくてすむ。
以下は、ある朝青龍ファンの女性が、ブログで公開した高砂部屋の収入の試算である。それによると、2009年12月の時点で試算された高砂部屋の協会からの年間収入は、約5000万円である。
これは、力士や行司、部屋付き親方など、部屋に所属する個人に対するものは除いた、協会から入ってくるお金だけである。高砂親方は著書『親方はつらいよ』(文春新書)で、相撲部屋と日本相撲協会との関係を商店街の振興組合に喩えているが、一般の商店街でここまでお金(振興費)を払ってくれる組合がどこにあるだろうか。
相撲協会とは、資金が豊富にある、超優良振興組合と言えるだろう。
[高砂部屋の年間収入:2009年度試算]
全14人の力士構成
横綱(1人):朝青龍
平幕(1人):朝赤龍
幕下以下(12人):朝ノ土佐、男女ノ里、輝面龍、塙乃里、朝縄、朝弁慶、
笹川、大子錦、朝久保、朝奄美、朝興喜、朝日向
寄付行為が定める協会からの支給額
A)部屋維持費(場所ごと弟子一人につき11万5000円)
B)稽古場維持費(場所ごと弟子一人につき4万5000円)
C)力士養成費(幕下以下の力士一人につき毎月7万円)
D)養成奨励金(年額:十両114万円、平幕126万円、三役156万円、
大関216万円、横綱276万円)
■以上の基本データを高砂部屋に適用
A)115,000×14人×6場所=966万円
B)45,000×14人×6場所=378万円
C)70,000×14人×12月=1,080万円
D)126万円+276万円=402万円
計2,826万円
【高砂親方への支給額】
月額給与(協会理事) 1,405,000円
場所手当、審判手当等(年)1,500,000円
年額賞与(年) 2,800,000円
勤続手当(月:勤続22年) 14,000円
計2,133万円