第2回 《相撲賭博の実態》
“東西張り”から、最近は“幕内5番”が主流に (1)
野球賭博とは、ハンデを付けたチームの試合のどちらかにはり、その勝ち負けを争うもの。相撲賭博も仕組みは同じで、そもそも野球賭博で味をしめた胴元たちが始めたと言われている。
相撲賭博の基本は勝敗当て。つまり、丁半バクチと同じだが、野球賭博と同じようにハンデが付く。相撲の場合は都合よく東西に分かれているので、「東が勝つか西が勝つか? さぁどっち?」という単純発想からスタートしている。
以前、わたしたちが関係者から聞いたところでは、「最近は不況だから、バブルのころのようなことはないね。あのころは、もうやったらめったら賭けが集まったし、お相撲の人間の情報も金で買い、しこたま儲けた連中もいた」ということで、当時は、幕内の全取組を対象に、東か西かのどちらかに賭けるという形式で行われていたという。
「幕内の勝負は20番ある。だから東の11勝9敗とか、12勝8敗とかなるわけで、たとえば東に10万円張ったとすると、勝てば胴元に1万円戻して19万円がフトコロに入ってくる」
「ただし、単純に東か西かじゃ話にならない。野球だってハンデあるから、相撲にもこれを付けた。たとえば、東のニイハン(2.5)とかいうふうにすると、み〜んな頭をひねって張ってくる。それで東西の張りが同じになれば、胴元は損はしないとい仕組みになっている。2.5付いているときというのは、11勝9敗じゃ負け。ハンデ足して11対11.5になってしまうから。12勝8敗なら12体10.5で勝ち。この辺が微妙で、ハンデは上から降りてくる」
上というのは、暴力団の上層部。胴元中の胴元(大胴)で、ここから、中胴、小胴、走り胴というように、野球賭博と同じように張りの客の間を網の目のように組織化されて賭博が行われていくという。
走り胴に集まるのは、多くて40〜50万円。それでもテラ銭は1割だから、1日4〜5万円の売り上げになる。小胴ともなると100万円を越え、中胴を経て大胴までいくと、数千万円から億の金が動いていたという。
ところが、この“東西張り”は、若・貴の登場でガチンコ相撲が増えるとともに衰退していった。というのも、それまで胴元は注射を仕掛けて、張りのかたよりを逆転できたのに、できなくなってしまったからだという。力士のほうでも、こうした賭博に協力し、注射で転ぶことで礼金を入れていた者たちが減り、相撲賭博はウマ味がなくなってしまったのだ。