第1回 《八百長が反社会的行為になるとき》
野球賭博と相撲賭博はつながっている
2010年5月20日、夏場所が開催されている最中に、野球賭博事件が発覚した。報じたのは『週刊新潮』(5月27日号)で、大関・琴光喜が暴力団を胴元とする野球賭博に関与、阿武松部屋の床山、床池の誘いを受け賭博に参加し、床山の兄の元幕下力士に1億円の口止め料を払うように恐喝されているというものだった。
この報道をきっかけに、野球賭博問題は角界を揺るがすことになり、相撲協会は今回の八百長発覚と同じように、力士の調査に乗り出した。その結果、琴光喜が野球賭博への関与を認め、さらに、なんと65人もの力士や親方がなんらかのバクチをしていたことを認めることになった。
その内訳は、野球賭博に29人、賭け麻雀、ゴルフ、花札などの賭博36人の計65人である。その後、警視庁の組織犯罪対策第3課は、賭博開帳図利の疑いで、阿武松部屋、境川部屋、時津海部屋など三十カ所以上を家宅捜索し、今回の八百長発覚につながるケータイが押収されたのである。
この野球賭博のキーマンは、2011年1月26日に逮捕された阿武松部屋の元力士・山本俊作容疑者だった。この山本容疑者の容疑を追っていくと、彼の父親が暴力団員であり、野球賭博ばかりか相撲賭博に関わっていたことが濃厚になる。
ここにいたると、大相撲の八百長は、取り組み自体が暴力団の資金源になるので、問題の根は深くなる。
相撲の取り組みの結果は、注射の話し合いがついていれば、事前にわかる。しかし、これを知り得るのは、当事者や中盆などの互助サークルだけである。しかし、この情報を、相撲賭博を開帳する胴元が知り得たらどうなるだろうか?
いくらでも、情報を持たない客からお金を巻き上げられる。これこそが、本当の八百長であり、イカサマ賭博である。
大相撲の注射が反社会的な行為となるのは、こういうときである。力士同士が互助会として星の回し合いをしているだけなら、かわいいものだ。しかし、相撲賭博にまで力士が手を出していたとなると、それは、注射相撲とはまったく意味が違ってくる。
およそギャンブルこそが、もっとも公平性を求められるゲームである。初めから勝敗がわかっているゲームに賭ける者はいない。ところが、何人かの力士は、自分たちが行う相撲賭博にまで手を出し、注射を行っていた形跡がある。