唖然!呆然!の大相撲技量審査場所を斬る! 〈1〉
5月8日から始まった技量審査場所は4日が経過した。NHKの中継もなく、土俵上の華やかさもない場所だが、どこのメディアも曲がりなりにも相撲が再開されたことで、好意的に報道している。
しかし、玄人筋の相撲ファンには、唖然、呆然とするしかない場所だ。いったいなにが起こっているのか? なんで、こんなつまらない場所になってしまったのか? 以下、3つの点で、分析してみたい。
〈1〉 ガチンコなのに無気力相撲ばかり
「正直言って、これほどつまらない場所はない。ガチンコはガチンコだが、これほどやる気のない相撲になるとは信じられない」
と言うのは、あるベテラン相撲記者。
「今日までに白熱の一番と呼べる取り組みはひとつもない。どの取り組みも立ち合いがのろく、しかも、呼吸が会っていない。それで立つものだから、有利に立ったほうが寄り切るか押し出すだけ。そんな取り組みばかりだ」
確かに今日まで、決まり手でいちばん多いのが「寄り切り」と「押し出し」。これでは、注射があったときと変わらない。土俵際の投げの打ち合いやうっちゃりなどは、ほとんど見られないから、これがガチンコ場所なのかと目を疑う。
これは成績にも現れていて、横綱・白鵬は予定通りの4連勝。対戦相手はみな初めから全力でぶつかっていっていないのがミエミエだった。上位では3大関を破って3勝1敗の豪栄道だけが本気でやっているだけ。ただ、日馬富士戦など、ガチンコの豪栄道のほうが日馬富士より力は上なのだから、勝つのは当然だ。
完全ガチンコの稀勢の里となると、これは最低。これがガチンコかという負け方ばかりで、まったくふがいない。そんなこんなだから、下位でちょっとは本気でやっている豊響、赤青龍、魁聖が4連勝する始末である。
「見たかったのは、壮絶な星のつぶし合い。それがないんだからどうしようもない」と、玄人ファンのほとんどが嘆いている。
「それは仕方がない」というのは、元力士。「なにしろ、八百長問題でろくな稽古もしてこなかったんだから、みな、本気でぶつかるのを恐がっている。今回は、なんとか無事に終わればいいと思っているだけ。そういう雰囲気が読めないブラジル出身の魁聖が頑張っているのを見ればわかるでしょう」
確かに言われてみれば、そのとおり。力士たちは、ともかく極力怪我を避けており、後半戦までもつように、前半戦は力を出すのをやめている。
実際、この見方を裏付けるようなことが、4日目に起こった。大関把瑠都の発言に、放駒理事長(元大関魁傑)が激怒したのだ。
技量審査場所・3日目、すっ転がる直前の把瑠都 把瑠都は、3日目の取組後に「お客さんは、無料ですからたくさん見にきているけど、悪いけど遊びの場所みたい」などと発言。これを報道で知った理事長以下が、把瑠都を取組前に役員室に呼び出し、厳重注意した。
二所ノ関生活指導部長(元関脇金剛)によると、役員室で新聞各紙を突き付けられた把瑠都は「冗談でした」と漏らしたという。理事長は「言動と行動には気をつけろ」としかりつけ、二所ノ関部長は次回、同様の発言があった場合は出場停止もあると、記者たちに話したのである。
把瑠都という男は、ホント正直な男である。
〈把瑠都の無気力相撲 +α〉
平成23年・技量審査場所・三日目、把瑠都 vs 豪栄道( + 白鵬 vs 豊真将)