Opinion - 4
「大人になる」とはある境界を超えること (1)
米映画の『レインメーカー』を観たことがあるだろうか? もし観たことがないなら、相撲ファンとして、ぜひ観ることをおすすめする。
マット・デイモンが若き弁護士を演じるこの映画は、その根底で角界と通じると、わたしたちは思っている。そのストーリーは、ざっとこうだ。
マット・デイモンは、ロウスクールを卒業したばかりの新進弁護士。やっと見つけた法律事務所で働きながら、最初のケースとして保険金の不払い訴訟を受け持った。
依頼人は、低所得層の家庭の白血病の若者。彼は保険金が支払われれば骨髄移植を受けて助かることができる。しかし、保険会社は支払いを拒否し、彼は訴訟半ばで死んでしまった。
正義感と怖いもの知らずのマット・デイモンは、この後、保険会社の不正を暴き、会社側の悪徳弁護士の手練手管にも惑わされず、ついに賠償金を勝ち取った。
こういう話なのだが、注目すべきは、これが単なる保険業界の不正を暴いた物語ではない点だ。
もちろん、訴訟の課程で、保険会社の金儲け第一の悪徳ビジネスぶりが次々と暴かれ、会社側の弁護士が、勝つためにはなんでもするという堕落ぶりも描かれる。この点で、いかにもアメリカ映画らしい、“正義が勝つ”ストーリーなのだが、それだけでは映画は終わっていない。