Opinion - 4
「大人になる」とはある境界を超えること (2)
法廷デビューで、訴訟に勝ったマット・デイモンは、たちまち有名になる。若き新進弁護士が華々しくデビューしたのだから、マスコミもほっておかない。ヒーローになったデイモンのもとには依頼が殺到した。しかし、デイモンは、あっさりと弁護士を辞めてしまうのだ。彼は、このたった1回の勝利で自分の将来を知ってしまったのだ。マット・デイモンは、こうつぶやく。
「これで僕も一人前の弁護士になった。しかし、これでこれからはずっと勝つことを要求されるだろう。どんな手段を使っても勝つようにとオーダーされるだろう。そして、そうしているうちに、ボクは境界線(ボーダーライン)を越えてしまう。それは、かつてボクが敵視した悪徳弁護士になる道なのだ」
このマット・デイモンの姿を、相撲力士とダブらせてみてほしい。
最初はフェアプレー(ガチンコ)で勝ち進んでも、スターシステムという商業主義に乗ってしまうと、常に勝つことを要求され、やがて注射に染まる。これは人気力士になった以上の宿命である。
人間の世界では、大人になるということは、ある境界線を越えるということである。相撲とは、日本の伝統文化が育んだものだが、そこには、このような教訓もあると知ってほしい。
それがわかれば、相撲をもっと愛することができるだろう。