File - 7 《1988年九州場所 注射横綱千代の富士、ついに大乃国に敗れる》
千代の富士による八百長支配は、彼が横綱になった1981年から引退する1991年まで、ほぼ10年間にわたって続いた。それを象徴するのが、53連勝である。
当時、千代の富士とガチンコで取っていたのは、大乃国、安芸乃島、両国、栃乃和歌、寺尾の5人だけと言われている。
千代の富士の連勝が続くにつれて、角界の雰囲気はどんどんシラけていった。まず、北の湖の32連勝が抜かれ、続いて大鵬の45連勝が抜かれると、さすがに「こんなことでいいのか」と親方連中は騒ぎ出した。
この連勝中に高鉄山は、NHKに解説者として出演し、本当のことを話したら、その後2度とお呼びがかからなかったという。アナウンサーに何連勝まで行くのかと聞かれ、
「止めるといっても、大乃国しかいないんだからね」
と、高鉄山は、真実を言ってしまったのである。
実際、千代の富士の連勝を止めたのは大乃国であった。1988年九州場所の千秋楽、大乃国は最終的に猛ダッシュして千代の富士を土俵際に追い込み、強烈な左のど輪でのけぞらすと、一気に寄り倒したのだった。
もし、この一番がなかったら、千代の富士の連勝記録は確実に双葉山の記録69に迫っていたに違いない。
注射名勝負、昭和63年九州場所・千秋楽、大乃国、千代の富士の連勝を53で止める