Opinion - 9
本当にできるのか? 八百長再発防止。もし、防止策を本当に適用すれば、力士たちはみな壊れるぞ! さあ、技量審査5月場所を見に行こう!
4月15日、再発防止を検討する新生委員会が相撲協会に提出した「再発防止策」は、真剣につくられたものだが、現実的にはじつに滑稽なシロモノだ。なにしろ、「八百長を根絶する」という、できるわけがない目標に向かって作成されたものだからだ。
新生委の島村宜伸委員長(77)は「八百長が一切、出ないように最善の策を尽くした。携帯電話は連絡手段として有効で、危険なものは全部持ち込ませない」 などと語ったが、本音ではそんなことをしても仕方がないと思っているだろう。
新生委員会は全8項目にわたる再発防止策を決定し理事会に提出した。これを基に協会は「今月いっぱいまでに対策をまとめる」と放駒理事長(元大関・魁傑)。公傷制度の復活などを今後の理事会で議論し4月中に正式な防止策が決定するというが、いくら規定をつくろうと、実際には適用できるはずがない。
なぜなら、八百長こそが相撲のシステムだからだ。そのシステムの変更なしに、防止策をつくれば、相撲はまったく味気ないものなるだけだし、相撲そのものが変わってしまう。真剣勝負の相撲を15日間取らせたら、力士がどうなってしまうか、誰もがわかっている。
しかし、今回の規定は、なんとかそれをやらせようとしているのだ。
今回の規定で、「監察委員会が敢闘精神に著しく欠けると判断すれば厳重注意し、一場所で2度の注意を受けた力士には、休場勧告ができる」ということがあるが、そんなことをしたら、今度こそ、相撲はそこで終わってしまうだろう。「八百長の申し込みや要求、約束をした力士にも処罰範囲を広げる」という規定もあるが、これは中盆にも懲罰を課すということだ。しかし、中盆がいなくなれば、相撲システムは崩壊する。力士たちは、事前の根回しもなく、相手がなにをしてくるからわからない「死の土俵」に、毎日、全力で臨むことになる。
そうなれば、必ず、負傷者続出となる。
今回の防止策では、じつは、見送られた部分もあった。それは、ガチンコ親方たちから出された改革案だ。たとえば、「前日発表の取組を当日発表にする」。これだと、たしかに八百長仕組む時間がなくなるが、力士は前日から緊張のあまり眠れなくなる。当日、いきなり、ガチンコ力士と当たると知らされて、全力で突っ込むとなれば、体を壊す確率はぐっと高まる。
「支度部屋に監視カメラを入れたどうか」という提案もあった。「集音マイクを入れれば、八百長の談合はできなくなる」という提案もあった。しかし、これらが実施されたら、相撲は完全な監視社会になる。力士にはプライバシーもなく、ただ、土俵で全力を尽くして燃え尽きるロボットと化す。
さらに、「場所中携帯電話を取り上げる」「携帯履歴を定期的にチェックする」というのもあった。これでは、協会はビッグブラザーになってしまう。そんな相撲を誰が見たいだろうか?
相撲ファンは、強力な監視の下で行われる土俵で、力士たちの壮絶なファイトを本当に見たいのだろうか?
いずれにしても、次の「技量審査5月場所」は必見だ。記録も残るというから、力士たちは手を抜けない。そんななか、白鵬が全勝優勝でもすれば、もう偉大すぎる横綱としか言いようがない。なにしろ、白鳳―把瑠都、白鳳―琴欧州、白鳳―日富士などのガチンコ勝負が実現するのだ。ほかにも、モンゴル勢同士の壮絶な星のつぶし合い、十両陥落阻止をかけた真剣勝負など、いままでにない番組が目白押しだ。
これを見ない手はない。
(2011年4月17日記)