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外国人力士が増えて、注射はますます横行した! なぜか?
いまや注射は日本人力士の専売特許ではない。
今回の八百長事件で5人の追放者を出したモンゴル勢から、ロシアなどの欧州勢まで、外国人力士のほうがネットワークの中心になっていると言ってよい。では、なぜ、日本の伝統と思われた八百長システムがいとも簡単に外国人力士たちに受け継がれたのだろうか?
「それは、角界というのが村社会だからですね」
と、言うのは、あるベテラン相撲記者。
「これは日本人、外国人ということに関係なく、いったんこの中に入ってしまえば、その中のオキテ以外では生きられないということです。ですから、早くそのオキテに適合した者がいちばんトクできることになっています。しかも、相撲部屋というのは、一種の合宿所。食事も寝場所もあるわけで、オキテさえ守っていれば基本的なサバイバルは保証されるわけです。
こんな楽なシステムはありません。いまや日本人より外国人力士のほうがよほどハングリーですから、なれ合いの八百長システムは彼らには心地いいのでしょうね」
ところで、外国人は、相撲界以外のスポーツにも数多くいる。しかし、相撲界の外国人と比べて大きく異なる点が一つある。それは、日本語が下手だということだ。ところが、外国人力士はみな日本語がうまい。とくに、モンゴル力士の日本語は流暢だ。
「それはそうでしょう。10代半ばぐらいから相撲部屋に入り、起きてから寝るまで日本人力士と一緒に生活しているのですから、野球やサッカーの外国人選手とは全然違いますよ」
言葉を覚えれば、八百長もすぐ理解できるわけだ。
また、八百長をするのに、外国人のほうが有利な点もある。それは、やばい話になったら母国語で話せばいいからだ。『週刊現代』に八百長を告白した若ノ鵬は、琴欧州とその手の話をするときはロシア語を使ったという。
支度部屋でも、モンゴル勢はモンゴル語で気楽に話している。昔は、横綱に下の力士が気軽に話しかけることはなかったが、朝青龍、白鵬は、モンゴル力士とはモンゴル語で気楽に話している。
これでは、八百長を日本人が見破るのは難しい。
角界の勢力図はここ10年で急激に変わった。2011年の初場所の成績に基づく順席で幕内力士42人をみると、なんと12人がモンゴル出身。ブルガリア、エストニア、 ロシア、韓国、中国、ブラジルの各1人とグルジアの2人を合わせると、20人が外国出身者。つまり、幕内力士の半分が外国人なのだ。
今後は、モンゴル語を勉強しなければ、八百長の研究はできそうもない。
調査委は今回、八百長の仲介役をしたと自ら認めた元恵那司の証言などをもとにほかの関与力士を認定した。最も古い取組みは、2009年初場所の霜鳳―春日錦戦。日本人対決だ。調査委は、これ以前や上位力士の八百長調査にも当たったという。だが、携帯電話のメールと3人の証言以外に証拠は出なかった。
せめて、モンゴル語の通訳をつけることぐらいすべきだったろう。
2011年4月7日、日本相撲協会から引退勧告を受け、5日に引退届を提出した元小結白馬と元十両保志光が、両国国技館の同協会を訪れ、放駒理事長らに最後のあいさつをした。2人のモンゴル出身力士はスーツ姿で現れ、白馬は「いままでお世話になりましたと言いました。突然の引退だったので、これからなにをするかはまだ考えられない」と話した。2人とも近日中にモンゴルへ一時帰国した後、東京都内で断髪式を行うという。
(2011年4月8日記)