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相撲協会内は不満だらけ! 一門制の崩壊から今後は波乱含みに!
蒼国来と星風の八百長関与を認定し、25人の追放者を出したことで、八百長問題は表向きには決着した。しかし、協会内部は、今回の処分をめぐって、不満が渦巻き、なかには公然と上層部を批判する者もいる。
処分者のうち、引退届を出さなかった谷川親方、幕内・蒼国来、十両・星風は、不満と言うより、怒りを露わにしている。それは、谷川親方が処分発表後、「こんなバカな話はない」と声を荒らげたので明らかだ。その後、谷川親方は涙の記者会見で、引退届提出を拒否することを表明し、潔白を訴えた。
また、追加でクロ認定された蒼国来は、訴訟に持ち込むことを明らかにした。また、星風も引退届提出を拒否した。この星風の親方といえば、尾車親方(元大関・琴風)だが、尾車親方に関しては、こんな不満の声がある。
「今回も星風をタテにして、逃げ切ろうとした。尾車親方は八百長問題の調査が始まる前に、携帯電話を取り替えておけと力士に指示している。それこそ八百長だろうが」
「去年の野球賭博の時にも嘉風(の名前)が出ていたでしょ」
昨夏の野球賭博疑惑の対象となった同部屋の前頭・嘉風は、特別調査委の調べに対して、上申書を提出する以前に関与を認めたために情状酌量されている。
このような不満の声が出る背景には、理事会をめぐる権力闘争がある。角界を支配する権限がある理事のなかから、今回は3人が理事会から追われている。出羽一門の北の湖親方(元横綱)、高砂一門の九重親方(元横綱・千代の富士)、時津風一門陸奥(元大関・霧島)の3親方だ。
一門制というのは、簡単にいえば角界の派閥。この派閥のバランスによって、これまで相撲協会は運営されてきた。現在、相撲協会には、出羽海、二所ノ関、立浪、時津風、高砂と5つの一門が存在し、各一門の代表者が理事として協会運営に当たっている。当然だが、相撲協会の年間事業収入の約100億円の利権は、この5つの一門で山分けされてきた。これが、じつは八百長システムの根源にある問題だが、このバランスが崩れたことは大きい。
ある角界関係者が言う。
「一門システムは諸悪の根源という見方もありますが、これがなければ協会運営はうまくいかないのも事実です。それに反旗を翻してきたのが、貴乃花親方(元横綱)で、彼は二所ノ関一門を離脱してまで、昨年の理事選に出ましたね。そういう経緯があって、親方衆のなかには、今回の八百長問題発覚以降、〔たとえ文科省から公益法人の資格を取り消されたとしても、これまで角界を運営してきたやり方や伝統を守るべき〕という意見も出ていたんです。しかし、それは通らなかったわけです」
つまり、じつは、放駒理事長は、今回の八百長問題で暫定的に理事長になっただけ。角界関係者は、来年2月の理事長選を、すでににらんで動いていたのだ。
では、一門制のバランスはどのように崩れたのだろうか?
前記した3人の理事以外では、立浪一門の伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)は、十両・安壮富士の八百長疑惑が〈クロ〉と認定されたために次期理事の目が消えた。また、同様に九重一門の後継者だった八角親方(元横綱・北勝海)も、弟子の谷川親方(元小結・海鵬)と幕下・保志光の八百長関与で沈没。出羽一門でも、武蔵川前理事長(元横綱・三重ノ海)の後継と見られていた春日野親方(元関脇・栃乃和歌)が、八百長暴露の張本人・竹縄親方(元前頭・春日錦)の師匠として処分を受けた。
つまり、各一門が抱えていた年長有力者は、今回の八百長問題でそろって第一線から退場してしまったのである。こうなると、「これで角界の一門制が崩壊する」という見方が有力だ。来年の理事長選はともかく、相撲そのものが一門制の崩壊とともに変わる可能性がある。
さらに不満の声を追っていくと、こういう声ある。
「今回の処分そのものが八百長です。処分された力士を見てください。モンゴル力士が5人。それに日大出身が5人。これは狙い撃ちではないですか? また、立浪、出羽一門が多い。これも狙い撃ちではないですか?」
「協会は徹底解明と言っていきながら、幕内上位、三役以上は不問に付した。調査もしなかった。ならば、初めからそんなことを言わなければいいいのです。これでは、調査自体が八百長だ」
相撲協会がこだわったのは、できるはずもない八百長の解明、土俵の改革ではなく、公益法人を取り消されないことだけだったようだ。これでは、今後、協会運営は波乱含みで、なにが起きるかわからない。
(4月12日記)